
1955年、グッゲンハイム財団の奨学金を受け、中古のフォードで地続きのアメリカ合衆国48州を周り撮影した写真集 "The Americans"で知られる写真家ロバート・フランクの展覧会に行ってきた。
初めて "The Americans"を観たのは二十歳そこそこの頃。アメリカン・フォトグラフィーの事件の一つに数えられ、後々にまで影響を与える写真集とは如何に!と手に取ったのだが、その場で衝撃を受けたというより、当時の時代背景や写真界の潮流を知る中でジワジワと魅せられていった。腰の位置や車の中からササッと撮られたであろう写真も多いのだが、ロバートは「とにかく素早く撮らなくてはならなかった」と当時を振り返っている。そんな ”不安定” なイメージは、ぼんやりとした豊かさを世界の終わりの不安と諦めが覆ったアイゼンハワー時代の空気をまとい、空虚感に満たされている。
今回の展示では、スイス時代の物撮りなどの商業然としたものから近作までの作品の刷出しと映像が展示され、実際の写真集も手にとって見ることが出来る。また当時の資料も展示され、「みすぼらしい身なりで、散髪とひげ剃りと入浴が必要な外国語訛の態度の悪い男が、大量の書類とカメラを所持」などと書かれた逮捕時の調書もあったりして、ニヤっとしつつも撮影時に思いを馳せた。
オリジナルプリントの展示はほぼ無理とのこと、新聞用紙へのプリントも気になるレベルではなく、ロバート・フランクの作品を体系だって見ることが出来る良い機会でした。
会期:2016年11月11日(金)~24日(木)
開館時間:10:00~18:00(会期中無休 / 入館は17:30まで)
入場無料
会場:東京藝術大学大学美術館 陳列館 (東京都 台東区 上野公園12-8)