GQ読者の皆様あけましておめでとうございます。
今年も、昨年以上にGQならではの情報をここでお伝えしたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いします。
さて、年を越してしまいましたが、まずは昨年の新作を引き続き。
近年の機械式時計ブーム(!?)のお陰で、旧来のブランドだけでなく、
ユニークな時計ブランドも数多く生まれています。
そのマイナーブランドの生い立ちは様々で、
オーナーの思い込みが強くて、勢い出て来たところもありますし、
独自に開発した技術を満を持して発表し、そのまま成功したケースや
(「2016年のマイナーで偉大な新作 その1」にあるHYTが好例)
言葉悪く言うと「時計は金になる」的なノリで生まれてくる
ブランドも少なからずあるのが、この時計の世界です。
当然消えていくブランドも少なくないわけですが、
今回マイナーの中でも「老舗」となったところを紹介して
2016年を締めくりたいと思います。
それは、時計マニアなら一度は聞いた事があるだろうブランド
「MB&F」=マキシミリアン・ブッサー&フレンズ です。

これはオーナーでありコンセプターとも呼べる
マキシミリアン・ブッサー氏(マックス・ブッサー)が、毎回コンセプトを発案して
それに応する世界最高峰とも言えるスペシャリスト達を集めて
プロジェクトチームを組んで時計を製作する、
と言う変わったブランドです。
それらを成功させるチームは彼と志を同じとするため
ムーブメント製作者、PR担当から、カメラマンまで
全てのメンバーが「フレンド」と呼ばれ、同じレベルで公表されるのです。

2007年の第1作「HOROLOGICAL MACHINE No1」から
そのクオリティーはマイナーブランドそれとは次元の異なる高さで、
しかもあのマックスのブランド。
ずっと注目して来ました。
もちろんオークションでもハイライトのひとつです。
何故なら、このマックスブッサー氏、
ハリー・ウインストンの時計部門のダイレクターを務め、
あの「オーパス」シリーズを企画して成功させた本人なのです。
今では機械式複雑時計ブランドとしても定着しているハリー・ウインストンは、
彼の手腕。
そのキャリアーを投げ打って、旧来のブランドの制約を受けずに済むから
自ら始めたのが「MB&F」なのです。
残念ながら今日本には正規の取り扱い、販売店はありません。
ですが、このブランドをこよなく愛する影の「フレンズ」によって
ささやかですが、新作の発表が日本でもありました。

それが彼の基幹シリーズ「オロロジカルマシーン」の新作
「HOROLOGICAL MACHINE No8」=HM8 CAN-AMです。


このモデルは時刻表示が正面ではなく、
時計を装着した状態でドライバーが手首を返さず時間が読み取れる、
「ドライバーズウオッチ」となっています。

しかも針表示ではなく、瞬時に時間が切り替わるジャンピングアワーを
ディスクのデジタル表示式として、サファイアクリスタル製プリズムを使って
90度偏向表示するという、かなりユニークで凝ったギミックなのです。

これは今はない「AMIDA」と言うこれは1970年代に生まれた、
安価な機械式デジタルウオッチを手本としていて、
それを機械式時計として一つの完成形にしたのが、HM8 CAN-AMと言う訳です。

「オロロジカルマシーン」シリーズは機構だけでなく、
外装も全てのモデルが唯一無二の存在。
プリズムを使っているだけでも十分特殊ですが、
HM8にはケースに何と「ロールバー」が設置されています。


これはモデルサブネームになったスポーツカー・レーシングの
CAN-AM「カナディアン=アメリカン・チャレンジ・カップ」で
パワーを競っていたレースカーからそのインスピレーションされたもので、
この複雑な形状は18Kとグレード5のチタンのコンビネーションで
組み立てられています。

シリーズはHM1から様々なものより着想を得て生まれていますが、
それはメカニカルの部分だけでなく、
最先端で高度なケース製造が伴っていないと具現化できないものでした。
残念ながら「MB&F」は日本国内で見る機会はほとんどありません。
香港、シンガポールなどではコレクターズアイテムであり、
ドバイでは彼の作品とその仲間たちのクリエーションを集めた
「MB&F M.A.D.Gallary」がオープンしたと聞きました。
(M.A.D.Gallaryについては、当ブログ「ジュネーブより新作ウオッチレポート その2 番外編」にもあります。)
彼のオートマチックウオッチのローターは「バトル・アックス」と呼ばれます。

これは1975年に日本では放送された永井豪原作のロボットアニメ
「UFOロボ グレンダイザー」からインスパイアされたものなのです。
日本のアニメにも深く影響された、「MB&F」
ぜひ日本でも多くのファンに見てもらえるようになってほしいものです。
「MB&F」は1月16日よりジュネーブで行われるSIHHにも出展されています。
私は今年もGQ本誌鈴木編集長や時計担当とは別にSIHHに参ります。
続報があればお伝えいたします、
