ちゃんと鎮火しないと、もたない
どんな種類の熱狂であってもずっと続ける事はできなくて、はっと自分の中のエネルギーの枯渇に気づく事がある。つまり、大きな案件が終わった直後に他の仕事をしながら、どこかスローだったり、優先順位が曖昧だったり、時にやらされてる感さえ出ちゃったり。普段はそんな風に感じない訳だから、原因はあちらにじゃなくて、こちらにある。
感動してもらう事を目指し、少なくとも関心してもらわないと叱られちゃう仕事だから、体力知力と好奇心の総動員が必要で、自分の中のエネルギーを自分で滋養したりコントロールできないともたない。一度熱狂が始まってしまえば身を任す感じなんだけど、実は発火や鎮火の方が大変だったりする。自分にとって発火や鎮火に欠かせないのが、過ぎ去った熱狂を振り返って文字にまとめる事。
何の為にあんなに仕事したんだっけ。結果、何が嬉しくて悔しかったのか。活字にすることで思考できる。客観的に批判したり、たまには褒めたりする。そうして一つの熱狂とケリがつくと、新たな潮が満ちていく。

違和感のない虚像
数週間前、外務省の日本ブランド発信事業の一環として、江戸切子のPRイベントがロンドンのホルボーンで行われた。そのイベントの総合プロデュースと、そこで上映したショートフィルムの制作を担当させて頂いた。イベントの主役は、もう3年以上も公私共にお世話になっている堀口切子の堀口徹さん。なんともやり甲斐のある仕事。
ショートフィルム制作もイベントの企画運営も、相当な労力と集中力を求めるプロセスだったけど、とにかく学べた。堀口さんは勿論、堀口さんと親しくしている一流料理人の方々の考え方、沢山の超一流を映像化するという喜びを何度も噛んで味わった。
一流の料理人は素材を活かした料理を考える。つまり、素材の良さを損なうような味付けはしない。今回のショートフィルム制作の過程で、自分が一番試行錯誤したのはこの点だった。素材をありのまま放映することを期待されているわけではない。でも素材本来の素晴らしさを損なうような虚像にしてはいけない。
脚本に関して堀口さんと2時間を超える打ち合わせが複数回あった。自分としては、当初から堀口さんの良さはわかった上で(わかったつもりで)、それを存分に引き出す脚本を書いた。堀口さんは役者ではないから演技をさせる訳にはいかないけど、フィクションとノンフィクションぎりぎりの線で引き込みたかった。でも堀口さんからの結論は「やはり自分っぽくない」「自分だったらこういう言い方はしない」であって、脚本は何度も書き直された。結果として良い映像が出来上がったのはお互いに譲らないところを主張して試行錯誤したからだと思う。とても良い意味で、自分も堀口さんも、当初自分たちがイメージしていた着地点とは違う場所に着いた。

感動に必要な、時間的拘束以上の何か
最近、2歳の娘が「魔女の宅急便」にはまっている。朝、会社に行く前、大体いつも7時半から9時くらい、娘の後ろに座りながら、何度見ても本当に感動する。「飛べ」で泣ける。「燃やしちゃうわよ」で泣ける。なんて崇高な90分間だろうって毎朝思っている。あれほど素晴らしい作品のエンドロールに自分の名前がついたら、人生に折り合いがつくんじゃないかって訳のわからない事を考える。沢山の名前が連なるエンドロールを見て、感動を作るためには、それだけのチームが必要だよっていう当たり前な事がわかる。
ある構想や企画を実現したい時に「この人に付き合ってみよう」と思ってもらうためには何が必要なんだろう。感動を作る為には時間的拘束以上のコミットメントがどうしても必要になる。周囲にいる「人たらし」の方々(堀口さんやたっくん)に協力する人たちは、強くまっすぐな想いを持っている。彼らは自らのビジョンに酔えている(って勝手に書いて怒られそうだけど)。周囲はその純粋さに共感せずにいられず、心が温まってしまって、半ば暴力的に引き込まれてしまっている。そうした陶酔的な火照りを配るのは、周囲に気を配る事とは真逆の行為。
国籍を問わずもっともっと色々な人に会って沢山の主観性に触れたい。その中で、周りの人たちを温められるような自身の映像のテーマも探したい。同時に、臆する事なくどんどん映像制作を経験したい。これだけ沢山の情報があるのに、どんな親も第一子への子育ては大いに反省して、二人目三人目でその反省を活かしているケースが多いみたい。結局、ある事柄に関しては、経験していくしかないんだって事を、ショートフィルムを制作したり、子育てしたりしながら、思う。
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堀口切子のPRショートフィルム。海外PR用のショートフィルム制作と、欧州でのPRイベントの企画運営を個人の活動として続けていきたいと思っています。ご興味があればこちらまで気軽にご連絡頂ければ嬉しいです。
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