
夏の終わり、深夜だというのにほぼ満席の映画館で『君の名は。』を観た。
若い男女の悲恋を描いたアニメーションで、ものすごくヒットしているというのは本当みたいだ。ぼく以外の観客はほとんどが、恋愛中の若いカップルのようだった。
ところで、恋愛に勝ち・負けなんてあるのだろうか。
長い恋の終わりは、ノーサイドの精神でキレイに終わるべきだ、と人はいう。ぼくは昔のことを思い出していた。
表面上は、スマートな別れ話だったかもしれない。しかし薄皮一枚へだてたその奥にあったものは、犬も食わないような勝ち負けへの執着だった。
「こんなおれを、愛してくれてありがとう」
「ううん、こちらこそちゃんと愛してあげられなくてごめん」
きみは引き分けを主張した。
ぼくにはわかっていた。きみが、そうやって余裕をみせることで自分が「勝った」ことにしたいのだと。残念だけど、勝ったのはぼくのほうさ。
きみの考えることは、いつもぼくにはだいたいわかった。そのことに、きみは最後まで気づかなかった。むしろ自分こそよき理解者だとでも思っていたんだろう? そういうところが、ぼくは許せなかったんだ。
あれ、とぼくは我に返る。
どうして、またこんなこと思い出してるんだろう。
『君の名は。』は、そういう話ではない。これはこの曲の話だ。
ハナレグミ 『おあいこ』
この曲を書いた野田洋次郎は、『君の名は。』で印象的な劇中歌を担当したRADWIMPSのフロントマン。他の歌手のために曲を提供することもあるようだ。
若い世代に人気のロックバンドということでこれまで聴かないで過ごしてきたのだけれど、もったいないことをした。詩作の巧みさなんて、さだまさし並じゃないか。
そういうわけで彼の作品を140曲近くまとめて聴き終えたので、特に印象的な7曲を挙げる。
Aimer 『蝶々結び』
提供曲。紐を結ぶ手順を説明していたのがラブソングになり、最後には野田本人が登場してデュエットになる。
「結ばれたんじゃなく結んだんだ」
RADWIMPS『七ノ歌(なのか)』
ラブソングと両親への感謝を両立。
「好きな人の好みに俺を作った二人は天才です どうやったらんなことできるんですか」
RADWIMPS『狭心症』
ネット社会の万能感にひと刺し。
「僕は僕の悲しみで 精一杯なの」
RADWIMPS『いえない』
生きた死んだ、神だ世界だなんて歌詞が頻出するからRADWIMPSが好きだなんて、おじさんはちょっと“いえない”
「甘いのは 愛が見せる 夢のほうさ」
RADWIMPS『25コ目の染色体』
理系の求愛ソング。(真の理系は求愛しないと思うけど)
「あえてここでケーキ二つ用意 ショートとチョコ そこに特に意味はない」
RADWIMPS『アイアンバイブル』
イッツ・ア・ワールズ・エンド。
「領収書でもねぇ取っておく?」
RADWIMPS『セプテンバーさん』
夏の終わりの画期的なタイトル。
「夏がちらかしてった心を 僕は紡ぐよ」
illion 『GASSHOW』
ソロでは違った顔を見せる。(ベーシストは毛皮のマリーズのあの人じゃないか)「君が代」的な歌詞はスケールがでかい。
RADWIMPS『スパークル』
続きは『君の名は。』で。
「「さよなら」から一番 遠い 場所で待ち合わせよう」