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オメガ スピードマスター60周年

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月面に降りた唯一の腕時計「オメガ スピードマスター」。

この世界一有名なクロノグラフは、生まれてから60周年のアニバーサリーイヤーを迎え、

先ごろ2つの重要な記念イベントが行われました。


1969年7月20日ユニバーサルタイム(UTC)20時17分、

アメリカのアポロ計画は、人類初の月面着陸に成功しました。


これは人類が初めて,かつ現在唯一有人宇宙船によって地球外の天体に到達した偉業で、

人類史と科学史の特別な出来事です。

そして、そしてこの時、月面に最初に降り立った時計がこそが、

アポロ11号のバズ・オルドリン宇宙飛行士の腕に巻かれていた

「オメガ スピードマスター」。

この時から「オメガ スピードマスター」は腕時計として唯一無二の

「ムーンウオッチ」となった瞬間でした。

これは月面の石を持ち帰る為に実際に使用したバッグ。

最近のSotheby'sで落札されましたが、これもスピードマスターを着けながら

石をこの袋に入れた事でしょう。


スピードマスターにはもう一つ有名な逸話が残っています。


「アポロ13号」では、3人の飛行士を無事に地球に帰還させるために、

この時計が極めて重要な役目果した事です。


アポロ13号は月へ向かう途中、予備酸素タンクで爆発事故が発生。

司令船の主要な計器が使用不能になるという、宇宙空間で起きた前代未聞の事故でした。

この時 NASAのミッションは、月に向かうことから、

彼ら3人を無事に地球に帰還させる事に変わります。

全てが計画外の事態は、マニュアルのコントロールに頼られたのです。


宇宙船の地球帰還には正しい姿勢と角度が必要で、

再突入コースに乗るための必要なエンジン噴射時間は「正確に14秒」であると

地上のNASAが計算。

飛行士はその指示に従い携行している「オメガ スピードマスター」で

正確に噴射時間を計測し、彼らが地球に生還する一翼を担いました。


「アポロ13号」は映画でもヒットし、主演トム・ハンクスの手首のアップ場面は、

ブランドやモデルはわからなくても、

一つの小さな腕時計がこのドラマの中で最重要な場面を演じた事がわかるでしょう。


この二つのアポロ計画での出来事が有名ですが、以前のジェミニ計画から、

今日の国際宇宙ステーションで活動に至るまで、NASAのミッションの全てにおいて、

アストロノーツの命を守るギアの一つとして、スポードマスターはこの任を負っています。


このオメガ スピードマスターは1965年にNASAの公式時計に認定されましたが、

実は初代モデルが誕生したのは遡って1957年になります。

そして今年が60周年の記念の年となりました。

マイナーチェンジを重ねて進化しながらも、

基本的にはオリジナルとほぼ同じ仕様で今日まで生産され続けていることは、

驚くべき事実。


他にこんな時計はありません。


世界各地でスピードマスター60周年記念イベントが行われていますが、

日本でも去る6月 

“Lost  in Space”

と名付けられたイベントが開催されました。


しかし、ここでスウオッチグループのオメガは、心憎い演出を行ってくださいました。

夜に行われる華やかなイベントの前に、コレクターに向けてのファンミーティングを開催。

オメガ ミュージアム館長のペトロス・プロトパパス氏と、

商品開発・カスタマーサービス担当副社長、ジャン=クロード・モナション氏の二人が、

オメガミュージアムより持参した歴史上貴重なタイムピースを

実際にゲストに触らせながら、スピードマスターの歴史を語るという、

ファンには鳥肌ものの特別な機会を設けてくださったのです。


唯一のムーンウオッッチという事と、クロノグラフとして高い完成度を誇る事から、

スピードマスターには世界中にコレクターや研究が多いのも特徴で、

中でも日本は突出してコレクターが多いそうです。

そんな事からか、心憎い演出!


これらミュージアムピースは、

夜のメインイベントではアクリルケースの向こう側に鎮座しているわけで、

普段は「触れてはいけない」アイテムたち。


博物館の標本を直に触る貴重な体験をさせて頂きました。


見るだけと触るのは情報量としては雲泥の差があります。

装着感や質量も確認すべき点なので、これは実機あっての事。

私もオークションハウスのウオッチスペシャリストの一人として、

普段は市場に出てこないアイテム達を知る繊細一隅のチャンスとして

生かさせていただきました。


初めて知ったのは、NASAはミッション用にオメガ社に用途を特定し発注したのではく、

様々なブランドの市販品を集めて種々のテストを行った結果、

オメガを採用するに至ったとの事実。

ですから、一般の市販品がムーンウオッチとして選ばれた事になります。


精度コンクールなど特別な検定に供される場合、その時計は

「鬼調整」(マニアの間で言われる俗語ですが)と言う、 

特別な技師が特別な調整を行われ、一見内外装などは市販品と同じに見えても、

中身は別物と化しています。

当然コスト度外視、ブランドの威信をかけているのですから。


しかし、スピードマスターは北アメリカのオメガ代理店が

NASAからのオーダーを普通に納品。

その一般市販品は、思いもよらない過酷な試験を受ける羽目になって、

唯一故障せずに残ったと時計言う事でした。


一方変わって、夜のイベント

“Lost in Space”では、

今やスイス高級ブランドの代表としてのオメガの姿が表現され、華やかな世界。


とは言ってもスピードマスター60周年ですから、

「宇宙」をテーマにした演出はユニークでした。


スピードマスターは歴史的な名機ですから今までずっと気になってはいました。


ですが、こうやって節目の年に歴代のモデルや、その背景を学ぶと、

コレクションに絶対入れておかねばならないアイテムである事を再認識させられます。

しかも、今ではライフスタイルに合わせ、様々なバリエーションも用意されています。

春のバーゼルワールドで発表されたリミテッドモデルはすでに完売だそうですが、

スピードマスターはリミテッドでない「普通のモデル」こそ王道。



「アストロノーツの時計が普通に我々も買える!」

だって、これはすごいことではありませんか?



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