
いよいよ来週に日本公演が迫って来ました。
ニュー・アルバム『A Humdrum Star』を発売したばかりのピアノ・トリオ、
GO GO PENGUINが、世界ツアーの一貫として青山のブルー・ノート東京で
ライブを行うのです。
このGO GO PENGUIN、あのジャズの名門ブルー・ノート・レコードの社長、ドン・ウォズが複数契約をして一躍脚光を浴びました。DJ達の間では既に知られる存在だったんですけどね。
ピアノ・トリオですから当然、ピアノにドラムにウッド・ベースです。
編成は完全にジャズです。
しかし、曲はと言うと、ジャズというよりも見事なダンス・ミュージックなんです。
テクノ、ハウス、ドラムン・ベース、アンビエントを生演奏で聴かせるグループです。
え、ジャズじゃないの?
いや、ジャズかもしれないし、ジャズじゃないかもしれない・・・と答えるしかない(笑)。
だって、4ビートでベーズがブンブンブンブンとか言ってるのがジャズだと思ってる人が、GO GO PENGUIN観たら腰抜かすと思いますよ。
ドラム・ビートはソリッド、
ベース・ラインはアグレッシヴ、
そして
ピアノのメロディーは美しく、
リフレインはクラブ的。
僕が10代の頃、ペンギン・カフェ・オーケストラってのがヒットしまして・・・。
ああいう音楽、ニュー・エイジって言いましたっけ?
楽し気なのからヘンテコなのまで音楽性は結構幅広く、当時(80年代には)業界人が騒いでいたので、僕のような地方に住んでいて東京に憧れていた若者達は、イエロー・マジック・オーケストラなんかと一緒に聴いて悦に入っていた訳です。
カフェバーの時代に。あれ、かかってたのかな?カフェバーで??
糸井重里と湯村輝彦の『ペンギンごはん』なんか読みながら聴いてたのかな?
時は流れ、同じペンギンでも、ピアノ・トリオが、ジャズ・クラブで、言ってみればブチかますんです。僕、前回の来日公演も観ましたけど、ホント、歌もサックスもトランペットもいないのに、ド派手なんです。これ、カフェとかでかけられる音楽じゃないです。かけるとしたら結構小さい音にしないと、カフェがクラブ状態になってしまいます(汗)。
言い忘れましたが、フランスの野外フェスで彼等を観た時もオーディエンスの反応が半端なかったですね。メロディーというかリフというか曲の顔に当たるテーマ部分が出て来るともの凄い歓声が巻き起こり、客席(席ないんですが)はレイブ状態!3人の熱演で皆踊りまくる訳です。
ここ数年、ロバート・グラスパーや、グレゴリー・ポーター、カマシ・ワシントンと言ったアメリカのジャズが元気ですけど、基本、ソウルやファンク、ブルースといったブラック・ミュージックを基調にしたグルーヴなんです。遅目のBPMでノセる(カマシは勢いのある曲ない訳じゃないですが)感じ。
一方、マンチェスター出身の彼等は、結構早いんです(半分のテンポでのるツウもいますが)。クラブ世代の楽器弾きが打ち込みじゃなくて、ピアノとドラムとウッド・ベースでダンス・ミュージックやったらこうなるんです。だから、デカいフェスで狂喜乱舞するのは必然かと。彼等は聴衆の反応に"曲の中で"更に反応できる訳ですしね(DJは選曲で反応する人種です)。
ちなみに、マンチェスターってのがいいです。NYでもロンドンでもなく、ベルリンでもパリでもなく・・・。ザ・スミスが、ストーン・ローゼスが、そして、オアシスが巣立ち、伝説のレーベル、ファクトリー・レコードが発足し、伝説のクラブ、ハシエンダが一世を風靡した音楽都市から、新たなスターが、しかもピアノ・トリオ・スタイルで世界へと旅立ったのですから。
このGO GO PENGUIN、ペンギンカフェ・オーケストラ同様、クラシックの素養はあるでしょう。曲調だけでなく、様式美すら感じさせるので。しかし、肉感的で硬質なサウンドはあの頃のペンギンとはまるで違うと思います。
決して伝統を保守するのではく、"現代的な音楽のエッセンスをふんだんに取り入れ"、"先鋭的であろう"とする上に、"即興性"をも兼ね備えている訳ですから、やはり今の時代のジャズだとも言えるのです。
現代のダンス・ミュージックに拮抗するドラム・パターン。
過去のジャズには絶対なかったベース・ライン。
そして、
テクノもクラシックもジャズも全部ぶっ込んだピアノのメロディーとリフと、更にはインプロビゼーションが、渾然一体となるのです。
これがジャズかどうかなんてどうでもいい!
名前は可愛いんだけれど、そのイメージに騙されてはいけません。
とにかく、生楽器の演奏で今一番尖ってるトリオ、いやジャズ・グループだと思いますよ。
新しさはテクノロジーやマシーンにではなく、発想の中にあることを彼等は身を持って教えてくれます。
2/18〜21までブルー・ノート東京で。